『子どもは「この場所」で襲われる』
小学館公式サイトより引用
小宮信夫・著(小学館新書)
著者は「地域安全マップ」の考案者
著者の小宮信夫さんは、立正大学の教授です。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了されています。
「地域安全マップ」の考案者でもあり、著書では犯罪機会論(はんざいきかいろん)をわかりやすく紹介しています。
あなたの防犯知識はまちがっている
著者は、はじめに私たちの防犯知識のアップデートを提案しています。なぜ犯罪機会論が有用なのか、わかりやすく説明されています。
日本では「人」に注目する「犯罪原因論」がいまだに主流です。しかし、わかりやすく不審者の姿をして歩いている不審者はいません。
大抵の不審者は、サラリーマンや作業員の格好をしたりして町に溶け込んでいます。不審者と一般人を見分けるなんて大人でも難しいのではないでしょうか。
そのため、親に「不審者に近づかないように」と言われても、いったいだれが不審者なのか子どもは判断できません。犯罪原因論では子どもは自分で対応できないのです。
そこで著者の小宮さんは、「人」ではなく犯罪が起きる「場所」に注目して犯罪を避ける「犯罪機会論」を提唱しています。これなら知識があればだれにでも判断できるのです。
犯罪者は「入りやすく、見えにくい」場所を好むという原則があり、そのような場所に滞在しない、そのような場所を造らないことが重要だとしています。
「場所」で犯罪を防ぐという考え方
つぎに具体的な犯罪予防の方法について解説されています。住宅地、公園、トイレなどの具体的な危険ポイントが説明されています。この章は子どもの安全を願う大人必読です。
「弾丸」は誰でも持っている
犯行動機を解明するのはとても難しく、また動機というのは誰もが持っているものである、という著者の考察がとても興味深いです。
動機というのはさまざまな欲望であり、だれでも多かれ少なかれ持っているものです。
犯罪者の動機が発動してしまうきっかけを与えないようにする。それが犯罪機会論の試みであるというのです。
犯罪原因論がもてはやされた時代の悪魔の手術についてもふれられています。
危険がいっぱい!日本の公園
日本の公園はゾーニングされておらず、誰もがどこからでも出入りできる危険な構造になっています。どこからでも入ることができ、だれかに見られずに連れ去ることも容易です。
ゾーニングされている先進国の対策は、公園や遊具をフェンスで区切り、出入り口を限定します。そうすると「入りにくく、見えやすい」造りになっていて、不審者が近づきにくいのです。
子どもを守るために…
子どもを守るために私たちが何をしていけばいいのか、具体的な提案がされています。
著者が考案した「地域安全マップ」の作り方も詳細に掲載されています。地域安全マップ作りによるプラスの副産物についても言及してあります。
もっと詳しく書きたいですが、レビューなのでここまでにとどめたいと思います。
まとめ
お子さんがいる方、いない方にもぜひ読んでおいてほしい防犯の最新理論、犯罪機会論をわかりやすく解説してある本書。とても読みやすく書かれているため、2時間ほどあれば読めてしまいます。
実際の事件現場の写真や、図解もあり予備知識がなくても読みすすめられるので、ご興味を持たれた方はぜひお手に取ってみてください。
特に公園管理課、公園緑地課の担当者には読んでいただきたいです!
\ 子ども見守りGPS /